「ヒトはネオテニー化したサルだ」
1920年にL・ボルクが提唱した説です。ネオテニーとは「幼形成熟」のことであり、幼児期の特徴をもったままで成熟し繁殖することをいいます。イヌやネコなど動物の子どもはよく遊びます。遊びを通して生きるために必要な行動を学び環境に適応する能力を学習します。しかし、必要な学習を終えると成熟した後は、好奇心も探究心も低下してしまいます。

AS_90404046ところが、ヒトだけは例外です。大人になっても新しいことに挑戦したり、学習したりすることをやめようとしません。幼少期の行動の特徴がいつまでも残っているということは、「幼少期の延長」=ネオテニーによって脳が発達したおかげといってもよいでしょう。ヒトはあえて前頭連合野を未発達することによって進化してきたといっても過言ではないです。

だから幼少期に適切なしつけや教育が必要ということになるのです。脳は幼少期に育ちます。脳をはじめとする神経系は多数のニューロンから成り立っています。ニューロンは成長とともに数が増えるのではなく、生まれた赤ちゃんの時から140億のニューロンが出来上がっています。ニューロンとニューロンはシナプスという特殊な接点でつながれ情報伝達をしています。外から新しい刺激を受けると、脳に情報が送られ、ニューロンが働き、シナプスを介して他のニューロンに情報を送ります。刺激を受ける回数が多いほどシナプスの数が増し、神経回路が密に繋がって働くようになります。ヒトの脳はいちどシナプスを増やしておいたあとで複雑化した機能を整頓するという発達をします。

AS_105140108したがって幼少期にできるだけ多くの神経系ネットワークを形成させることによって、その後の環境に合わせて必要な機能を獲得できるようになります。つまりスポーツにおいても多様な運動経験を積んでおくことが、将来の適応力を高めることにつながるのです。

幼少期に自発性を育んでおくことはとても重要なことです。大人になっても好奇心をもち続けているからこそ、ヒトはクリエイティブなことができるのです。そのために前頭連合野は未熟で、成熟まで時間がかかって、だから学べる…というシステムになっているのです。見る、体験させる、感動させるなど情報をたくさん与えて選択肢を増やしてあげましょう。ただし好奇心は自発的でなければ意味がありません。遊園地のような受身の感動しか呼ばない場所ではなく、子どもが自ら「おもしろい」ものを求め感動し、自分の力で考えるような場所を提供できるよう心がけましょう。