1.社会性の獲得と生涯にわたるQOLの向上

AS_93901987社会性の獲得とは「社会関係を適切に行なうために自分の感情をコントロールする能力」です。
機能的にとらえれば「状況に応じて感情をコントロールして適切な行動をする働き」ともいえます。
この能力を育むのは幼児から子どもの成長期が最も適しています。遊びにより対象に触れ、関係性をもち、認知し、理解する能力を得ることは、子どもの心の世界を広げ、他者や環境との関わりを豊かにします。子どもが多くの問題に関わることで自発的に考え、仲間と協力して行動することで、社会関係力の基礎を作ることになります。

脳科学の分野では、熱中すること、楽しく喜ぶことをするのが知性の発達につながると言われています。楽しいことはすすんで行なうものなので、遊びが知性の発達として注目されるのですが、遊びは「どうしてもやらなくてはならない」ものではありません。やってもやらなくてもいい、何をしてもいい。きわめて流動的かつ自由なものです。ところが、「親が積極的に関わったほうがいい」という話をすると、大人が「この遊びをやらせたら、こういうことにいいじゃないか」「これをやっておくと、将来、役に立つのではないか」という考え方をしてしまいます。

遊びはただ楽しいからやるのであって、何かの準備訓練や、スキル上達のためにやるものではありません。強制して「やらせよう」とするのではなく、あくまでも子どものやりたい気持ち、自主性を尊重しなければなりません。遊びは重要ですが、何かの目的でやらされるようになったら、遊びではなくなってしまいますので注意が必要になります。

AS_88127959今日遊びからスポーツへの連続性が時宜にかなったものとされていますが、子どもに遊びの機会を多く与えることは、将来的に生涯にわたるスポーツ・自由時間活動につなげる大切な役割を果たすことになります。いかに自分らしく生きるのか、その質をたかめるのか、という生きがいや活力となります。

幼少期に遊びを通じて楽しい経験するということは、内発的動機付けの強固な基盤を構築することを可能にします。それは、その後のスポーツキャリアにリンクされ、生涯スポーツへの関与にとても重要な意味を持っています。

しかし、遊びを経験せず早期の専門トレーニングに特化し続けると、アメリカでは13歳で子どもの70%がスポーツからドロップアウト、ドイツでは17歳までのスポーツクラブ離れ増加という深刻な問題に直面しています。

多くの親は、自分の子供が一つのスポーツを小さいころからやり続けることで、将来の道が開けると信じ込んでいますが、残念ながら、実際にこれは逆の効果を持っているといえるのです。

このようなことが起こらないようにするために、スポーツの導入には段階的構造が必要であり、入り口の部分では多種多様な遊びの要素が求められるのです。

また、小学校の終わり頃には子供たちは自分の好きなスポーツに特化するか、レクリエーションレベルでスポーツを継続するか、いずれかの選択機会を持つということも必要だと思います。

そして、それらに適用できるような環境を作ることが今後のスポーツ界の課題といえるでしょう。