池谷直樹さん

池谷直樹さん

体操選手

バルシューレスタッフ(以下BS):池谷さんは、体操はいつ頃から始められたのですか?

池谷氏:小学校1年生から体操クラブに通い始めました、当時はスイミングスクールにも通っていましたね。本格的に体操の選手として活動を始めたのは小学校の3年生からです。両親から言われて体操一本に絞って活動を始めました。そこからはどんどん体操漬けになっていきます。一番練習していたのは中学生の頃ですかね、毎日夕方16時頃から11時くらいまでやっていましたね。兄弟で「僕らは全国1位にならなきゃいけない」という使命感がありましたからね。

BS:そんなに練習して嫌にならなかったですか?

池谷氏:嫌でしたよ。正直ずっとやらされていた感がありました。(笑)自分自身が本気でのめり込んでいったのは、大学生になってからですかね。技が面白いくらいできるようになってきたのと、自分で演技内容を考えたり、練習メニューを考えてやれるようになってきたので。選手としても一番伸びた時期じゃないかと思います。
ただ、やっぱりそれは中学・高校でしっかり基本をやってきたからだと思います。当時はまだ身体ができていなくてやれなかった技などが、体つきが伴ってきた大学生の頃からどんどんできるようになってきました。

BS:基本があって、それを体現できる身体ができあがってくると応用技のバリエーションが増えてくるということですね。体操は球技スポーツなどと違って、評点で競い合いますよね。大会に向けてどんな準備をされていて、当日はどのような心理状態で臨むのでしょうか?

池谷氏:おっしゃるように体操は評点で競い合う競技です。相手がどうというよりも、それまで準備してきたものを自身が想定通りに再現できるかどうかが重要です。

例えば、準備していた演技種目を完璧にこなせば15点の評点が取れるということは、演技をする前から自分ではわかっています。ただ、実際に競技会場にいくと普段練習している場所とは景色が違ったり、会場に準備されている器具の感触が普段使っているものと違ったりと、普段とは違う条件がたくさん出てくるんですね。それから、心理状態や身体の調子も重要です。競技会場に人が多いと緊張感も増しますし、それから、体操では「試合筋」が出ると言うんですが、普段では信じられないくらいの力が試合で出ることがあります。でも、良すぎてもダメなんですね。普段より早く走れたり高く跳べたりすると、余計に失敗したりします。だから、当日は自分のコンディションも考えがなら、微調整していきます。演技前の準備の時間も演技をしている最中もずっと考えています。「次のこのアクションはこれくらいの力加減でやろう」って。0コンマ何秒って世界ですが、ホントに一瞬一瞬の時間の中で考え続けています。そして、そういった経験を何度も重ねていくと、自分の思い通りにコントロールできるようになっていきます。

だから、強い選手は練習を試合のようにやる。試合のような緊張感を持って練習で豊富な経験を積んだ選手は、どんな試合でも自分をコントロールできるようになります。ただ、自分もその領域にたどり着いたのは引退する1~2年前ですけどね。

バルシューレを経験してみて

BS:バルシューレを体験してみて、どうでしたか?

池谷氏:非常に大切な運動経験だと思います。ボールを取る感覚、つまり自分とモノの距離感を計れるような感覚はこの時期にしか身につかないですからね。今日も小さいお子さんが転がっているボールを追いかけていましたけど、ボールを取ろうとして手を伸ばしても追いつかずに転がっていくというのを何度も繰り返していましたよね。ホントにたった数センチの距離感なんですが、子どもの時に経験して手を伸ばすタイミングや速さを調整できるようになっているかどうかは先々重要になってきますよね。
タレントさんに跳び箱を教えたりすることがあるのですが、子どもの時に色んな運動経験がある方とそうでない方では、ロイター板の蹴り方が全然違います。一目見てわかりますね。どうしたら跳べますか?って聞かれますが、子どもの時に十分な運動経験がない方は無理ですねって答えるしかないですね。(笑)

BS:ちなみにバルシューレの経験は体操でも活用できますか?

池谷氏:はい、使えると思います。私たちも体操の幼児向けの授業なんかで、ボールを使って同じような事をやります。体操って自分の体を思い通りにコントロールできるかどうかが重要なので、十分に通じる能力ですね。体操が発展した新体操、特に女子の新体操はボールを使う演技などもありますからね。

BS:ありがとうございます。
最後に、これから運動を始めるお子さん、保護者の皆様に一言お願いします。

池谷氏:スポーツをするかしないかに限らず、人間って食べる・寝る・運動するっていうのは生きていくために必要なことですよね。子どもの時に身体を動かす楽しみを知り、自分の身体のコントロールの仕方を知っておくことで、生涯に渡って役立てて行けると思います。身体が元気なうちはどんな仕事だってできるし、色んなチャレンジもできます。身体が元気な子どものうちにバルシューレのようなものを通して運動する楽しみを知っておくことで、生きていく力を身に付けられるのではないでしょうか。